…私のブログが大台達成…そして未来へ…とそんなことを考えることもなく、11月23日の土曜日、唐突に孫たちの子守当番が回ってまいりまして…こども達の顔を見ていると、こども達はまさしく未来だな…と、思考が深まる秋に溶け込むような思いで…その未来が希望に満ち溢れたものでありますように…と、しみじみと孫たちの容姿を見つめるばかり…
…そして愛犬も二人の訪問に大喜び…
…で、未来とか、希望、幸福こそ「生きる」ことの神髄…その「生」に思いを馳せておりましたら、ふと五木寛之の言葉が思い起こされてまいりました…こども達に約束された溢れるようなその「生」の対極を為すのが「死」…その「死」について、ローマ時代の哲学者「セネカ」と「兼好法師」が同じような捉え方で、「死」イコール「生」であると論じた視点…
…「死」は前方になく、ある日、後ろからポンポンと肩を叩きにやって来る…と…で、人間は前に進むことしかできないから、後ろに囚われることなく前だけを見つめて今日という「生」を積み上げて行かなくてはならない…その先に「明日がある」と…、まあ、そんな言葉を思い返しておりましたら、こんな「道歌」を思い出しました…
…明日ありと思う心のあだ桜 夜半に嵐の吹かぬものかは…
…と、親鸞が9歳で得度したときの心がけだとか…明日があると思って今日をむなしく過ごしてはならない、と、9歳でこんな「道歌」が詠めるものか…と昔は訝っておりましたが、天才は常人が想像できないことをサラリと乗り超えてしまうようです…まっことオソロシイ、(-_-;)…親鸞を知っている人が今の世に居ないことは確かなことで、真偽の程は分かりかねますが…しかし天才は確かに居るのです…
…過日、令和6年の司法試験に17歳で合格した男の子が話題になっておりました…弁護士試験を受けるための予備試験に中学生の時に合格し、翌年の司法試験に一発合格…いやはやいやはや…おそろしか~
…まさしくこども達の未来は希望に溢れています…その目を積んでしまうのが私のようなアンポンタンな大人…では私たちはどのようにこども達に接すれば良いのでしょう…(-.-)
…そんな思いに答えを出してくれそうなオハナシが「致知」の対談に掲載されておりましたので、早速ご紹介しましょう…以前にも私のブログで紹介したことのある、三男一女を東京大学理科三類に合格させた教育方針が話題になった「佐藤亮子」さんとお茶の水女子大学の名誉教授「内田伸子」さんの対談です…
…(^^)/~~~(^^)/~~~(^^)/~~~ 少し長くなりますよ~(-_-;)、お覚悟を<(_ _)>
…子育ては十人十色という。一方で自分の子育てに迷い、自信を失う親もいる。普遍の法則は本当にないのだろうか。NHK教育テレビの番組監修や通信教材の開発に携わってきた発達心理学者の内田伸子さん、絵本1万冊・童謡1万曲の教育で三男一女を東京大学理科三類へ進ませ注目を浴びる佐藤亮子さん──昨今の教育界に一石を投じる親交の深いお二人に、子育てのヒントを繙いていただく。
…タイトルは「自走する力を乳幼児期から育てる」…
佐藤 あぁ内田先生、お久しぶりです!
内田 お久しぶりです。
佐藤 1年ぶりですかね?
内田 そのくらいかしらね。
ついさっきまで、こども発達学科の教授を務めている岡山県のIPU・環太平洋大学の講義を自宅からオンラインでやっていたの。佐藤さんと対談があるから急いで飛び出してきたんですよ。
佐藤 先生と最初にお会いしたのは、もう7年くらい前になりますね。テレビ番組でピアニストの辻井伸行君のお母さんのいつ子さん、卓球の平野美宇選手のお母さんの真理子さん、レスリングの吉田沙保里選手のお母さんの幸代さん、そして私の4人で、母としての体験を語りました。コメンテーターの一人が内田先生でしたね。
内田 ええ。佐藤さんがお子さん全員を東京大学理科三類に入学させたと聞いて、感心しました。
佐藤 あの時は上の男の子3人だけでしたけど、長女も同じ学科を卒業して4人になりました(笑)。
内田 印象に残ったのはね、どのお母さんも、自分の子が成長していける環境をしっかりと準備されていたことです。中でも佐藤さんは、勉強でも子供たちに直近の目標ばかり追わせるのではなくて、将来どういう人生を送ってほしいか、自走できる人に育ってほしいかを考えて接していらした。
佐藤 私は、子育てを18年限定の尊い営みと思って没頭しました。18歳から先はもう自分の世界ができてくるだろうし、その先は元気に、好きな道を歩んでくれればいい。実際、手のかけようもないですしね。その代わり、18まではとにかく手をかけようと。
内田 立派ですよ。
佐藤 だから、うちの育て方を誰に何と言われようと、もう育っちゃったから仕方ないよねっていうスタンスなんです。でも、教育の専門家や学者さんから「学問的にはこうだ」って、親や子供を取り巻く現実を顧みずに正論のようなものを振りかざされて、何だかなあ、と思うこともありました。
…その点、内田先生は違いました。いま家庭はこうなっている、子供はこう育つものだから…って、子供を見る目が優しいんですよ。当然、子供を育てる母親にも優しい。お会いする度に「ああ、心地いいなあ」って思います。
内田 去年(2023年)、NewsPicksさんの討論番組で早期教育の是非について話し合った時も、佐藤さんは賛成派、私は反対派の代表で呼ばれていたのに、いつの間にか意見が合っちゃったものね(笑)。
…早期教育がいいかどうかの議論は昔からありますけど、要は〝自走〟できる子供に育てることが大事なんです。自走というのは自分で物事を考え、判断し、自分の人生を選び取れる力があること。乳幼児期からその人間の根っこを育てていく大切さを、佐藤さんの体験は教えてくれています。
お茶の水女子大学名誉教授 内田伸子
昭和21年群馬県生まれ。45年お茶の水女子大学大学院人文科学研究科修士課程修了。平成2年同大文教育学部教授に着任。専門は発達心理学、言語心理学など。ベネッセ「こどもちゃれんじ」監修やNHK「おかあさんといっしょ」番組開発も務める。23年より現職。令和3年文化功労者。5年瑞宝重光章を受章。著書に『AIに負けない子育て―ことばは子どもの未来を拓く』(ジアース教育新社)他多数。
佐藤 先生は私が子供に絵本1万冊の読み聞かせ、童謡1万曲の歌い聴かせをしたとお話ししたら、すごく褒めてくださいましたね。
内田 はい。最近、子供の将来が心配で、赤ちゃんのうちから英語学習のCDを聞かせているご家庭も多いようです。でも実は、日本語やモンゴル語、韓国語といったウラル・アルタイ語系を母語にする人たちは、生まれながらに英語を理解することが難しいんです。
…英語はインド・ヨーロッパ語系という別の分類になりますが、同じことを言うにも日本語とは語順から違う。動詞の格変化や時制、複数形のつくり方、特にaやtheのような冠詞の使い分けなんて、分かりにくいでしょう?
佐藤 感覚では理解しづらいです。
内田 母語の大事さを証明した研究があります。言語心理学者のカミンズは、日本からカナダのトロントに移住した日本人家族の子供80人の、英語の習得過程や学業成績を10年間追跡調査しました。
…すると、幼児期に現地に渡った子、現地で生まれた子は、小さいうちは英語の発音や聞き分け(弁別能力)は現地の子供と変わりませんでした。しかし小学校に入ると算数以外、読み書き能力が求められる教科の学習についていけなくなるという傾向が見られました。
…興味深いのは、その反対に一番早く現地人並みの英語読解力を身につけたのは12歳くらい、つまり小学校卒業前後で日本を離れた子供たちだったんです。英語読解力の水準に達するのに要した期間は、概ね1年半でした。
佐藤 1年半。小学校レベルまで日本語をきちんと学んだ子のほうが、結局後から英語の読解能力もつきやすいってことですか。
内田 そうです。教育漢字1,026字の読み書きや自由研究のレポート書きなど、母語の土台を耕し、考える力を育てておくことが英語読解力の向上に繋がるのですね。
佐藤 なるほど。確かに、英語で日常会話ができたら素晴らしいことです。ただそれだけだと、お店で上手にハンバーガーを頼めても、本格的な英文学は全然読めない、浅い会話しかできない大人になりかねません。これでは人生つまらないですよね。
…日本語の基礎がきちんと身につくには12年ほどかかります。だから私は、6年生まで英語学習は要らないとも感じています。
内田 日本語が身についた子は、日本語で論理的な説明を受ければ、英語を聞き分けるコツや発音は後から覚えることが可能です。
佐藤 問題は喋る内容ですよね。決して英語を学ぶことを否定したいわけではなく、どの言葉を母語として教えるかが大事。日本人に生まれたなら、日本語で土台をきちんとつくらないとその上に何も載りません。安易に他言語を弄ぶべきではないと思いますね。
教育評論家 佐藤亮子、
大分県生まれ。津田塾大学卒業後、大分県内の私立高校で英語教師を務める。結婚後は専業主婦として三男一女を育て、全員を東京大学理科三類に進学させる。その教育が注目を集め、現在は進学塾のアドバイザーを務めながら、子育てや受験をテーマに全国での講演やメディア出演を行う。著書は『子どもの脳がグングン育つ読み聞かせのすごい力』(致知出版社)他多数。
内田 それといま懸念されるのは、スマホやタブレットの急速な普及ですね。2019年、文部科学省が「GIGAスクール構想」を掲げ、小学1年生から中学3年生まで一人に1台の端末が支給されて、インターネット環境の整備が進められてきました。教育現場でのIT活用、ICT教育の遅れを取り戻すという名目ですけれども、これは大変なことですよ。
佐藤 私、スマホを子供に与えることにはもう大反対です。
もちろん使ったほうが勉強が捗る子もいます。いい面も確かにあるんです。ただ問題は、大人が勉強の名目で与えても、子供はそればかりに使うわけではない。
内田 そう。どうしてもYouTubeを観たり、SNSで友達に連絡をしたりしてしまう。親の制御が利かなくなることが一番の問題ね。
佐藤 あれを持って部屋に籠られたら、何をしているのか全く分かりません。ちなみにスマホやタブレットの有害性って、学術界ではどう考えられているんですか?
内田 いくつも研究が出ています。毎年、文部科学省が学校保健統計調査を実施していて、インターネットの利用時間と裸眼視力の関係を調べています。スマホってものすごく近くで見続けると、目の水晶体(レンズ)の厚みを調節する毛様筋が発達しないので、何と6歳までに視力が0.06しか出ないという結果が出ています。
佐藤 ええ……怖いです。小さい画面を両目で見つめるので、斜視の子が急増しているって聞きます。
内田 後でお話ししますけども、子供に外遊びをさせるべきです。スマホを触るよりよほどAI時代に大切な力を育ててくれますよ。
…もう一つ、15年前まで日本でも普及していたアメリカ発のあるビデオ教材の問題を紹介します。就学前の子供に見せる知育教材として人気を博していました。
…2007年、アメリカ・ペンシルベニア州で行われた大規模調査の結果が小児医学雑誌で発表されました。同地域に満期出産で誕生した健康な赤ちゃん1,800名を6年間、追跡調査したら、500名ほどの子供に言語発達、知能発達の明らかな遅れが見られたんです。
佐藤 4分の1以上の子供に。
内田 調べてみたら、この子たちはそのビデオを生後6か月以降、1歳まで、一日1時間以上見せられていた。その頃の赤ちゃんってほとんど寝ています。一日1時間も見せたら、起きている間ずっと、よく分からない映像と音を浴びているようなものです。脳の情報処理機能が未発達ですから、一種の脳梗塞状態になるわけです。
…ファンクショナルMRIで脳を分析したら、そういう子は人の肉声を処理するウェルニッケ野が萎縮していた。脳のネットワークが発達しなかったわけです。人の声が雑音のようにしか聞こえなくなってしまいます。
…これを受けて結局、販売元のディズニー社が商品を回収して購入者に返金しました。日本では講談社が取り次ぎ店をしていましたけど、幸い私が野間教育研究所の理事をしていたので、すぐ理事長だった野間佐和子社長に伝えて国内での流通は阻止されました。
1992年頃、ご長男を抱く佐藤さん
佐藤 内田先生の知識や指摘には驚くことが多いです。でも、人間そのものへの愛も強く感じるんですよ。そういえば先生の歩みは、伺ったことがなかったですね。
内田 私は群馬県の北端、沼田の出身で、高校時代にフランスの医師ポール・ショシャールの『人間の生物学』という本に影響を受けました。そこに「人間に興味を持つ者は、あらゆる思想的な立場を離れて、客観的に生物学的な人間像を持つべきである」と書かれていた。肉眼で見えない世界にすごく興味があったので、心理学と脳科学、どちらかを大学で勉強したいなと思い始めたんです。ただ私は昭和21年生まれで、田舎の女子高とあって一学年2人くらいしか大学に進学しない時代でした。
佐藤 当時はそうですよね。
内田 家庭の事情もあって、国公立大学の特別奨学金をもらうしかない。脳科学を勉強できる二期校の東京医科歯科大学の受験に失敗し、一期校のお茶の水女子大学で心理学を学ぶことにしたんです。
一方脳科学への興味も捨て切れずに、空いた時間は東大の脳科学研究所に通い詰めました。
佐藤 すごい。お茶大と東大の両方で勉強されたんですか。
内田 はい。おかげで大脳生理学者として著名だった時実利彦先生の指導の下、大学院生のお手伝いをさせてもらえて、当時の脳科学はひと通り学習できました。
…佐藤さんがおっしゃる人間への愛があるとしたら、母に学んだものかもしれません。実は一人娘の私が6歳の時、医者だった父が病気で亡くなって、母は父の病院を改装して助産院を始めました。
…当時はほとんど自宅分娩だから、お呼びがかかればいつでも自転車で、山を越え、川を越えて行く。これは大変でね。一つの家で毎年のように生まれるんです。そしてあってはいけないことだけれど、生まれた直後に間引きを頼まれることもあったそうです。
佐藤 ああ、間引きを……。
内田 でも、母は絶対に小さな命を殺めることはしませんでした。代わりに、まだ群馬では広まっていなかったオギノ式避妊法を手弁当であちこち指導しに行っていました。貧しさに喘いでいた当時の被差別部落の方から助産料は受け取らず、農家からはお米や野菜を助産料の代わりに受けていました。
…近所の人に後ろ指を差されることもあったそうです。それに対して母は「あの人たちも私たちと同じ人間。子供だって生まれる。みんな可愛いんだから」と言っていました。私はそういう姿を見て育ったんだなと思います。
佐藤 やっぱりお母さんの影響って、大きいですよね。
内田 佐藤さんのご両親はどんな方だったんですか?
佐藤 父は会社役員で、母は専業主婦でした。親は二人とも読書好きで、『文藝春秋』ほか月刊誌をいくつも取っていました。特に父はテレビはあまり好きではなく、大河ドラマとニュース・スポーツ以外は観ませんでしたね。
内田 私の母も読書好きでしたけど、ご両親とも文化人ね。
佐藤 大分の田舎に似つかわしくないほど家は広くて、たくさん本棚がありました。「世界文学全集」「日本文学全集」がずらーっと並んでいて。面白そうな作品を引き抜いて読んでいましたね。
…家では新聞を二紙取っていて、朝夕2回来るんです。私はピアノと書道、英語教室以外、塾に通ったことはないんですけど、毎日それを読むのが楽しみで。小学校から帰って朝刊を読む2時間と、そのうち配達される夕刊を読む1時間が私にとっての塾でした。延々と新聞を読む小学生でした(笑)。
内田 そういう習慣が佐藤さんをつくったんですね。
佐藤 私の子育て方針は、その新聞で読んだ記事に衝撃を受けたことが大きいんです。小学3年生の時でしたか、72歳の女性のインタビュー記事が載っていました。何でも夜間中学に通って、戦争で覚え損なったひらがなを一所懸命に勉強している最中だって。
…衝撃的だったのは「あ」の書き方を覚えるのに1週間かかった、っておっしゃっていたことです。え?「あ」なんて小学生の私でも書けるし、ご本人も立派に日本語を喋っている。なのに書くことは別なんだ、と不思議でした。
…その時思いましたね。読み書き計算といった基礎的な勉強は、大人になれば覚えられるわけじゃない。学びには旬があるんだって。
内田 えっ、素晴らしいですね!「学ぶには旬がある」! 10歳足らずでそれに気づける感性。体験と既有知識を擦り合わせて仮説を形成する、抽象化できることを「アブダクション推論」といいますけど、新聞を通して膨大な言葉、情報を蓄積していたからそれができたんでしょう。
佐藤 それともう一つ、中学2年生のある日、夕刊の一面に「能力は生まれつきでなく育てるもの」という信念で、独自の音楽教育を展開するスズキ・メソード音楽教室の連載が始まりました。子供にヴァイオリンを習わせたい親が列をなして来る教室と書いてあって、興味を引かれたんです。
…創始者の鈴木鎮一先生がそこで、このようにおっしゃっていました。「ヴァイオリンができない子供は、その子が悪いのではない。指導者が悪い」「子供がちゃんと弾き方を覚える、やりたくなるように指導するべきだ」と。うまく弾けない子は稽古が足りないとか、才能がないと言われる世界でしたから、衝撃でしたね。何事も押しつけるだけでは身につかない。親の導き方次第で子供は伸びるんだ、という信念に繋がりました。
内田 活字から得たそういう教訓が、読み聞かせに繋がったのね。
佐藤 はい。大学を卒業して2年ほど地元大分で高校の英語教師をやって結婚し、専業主婦になって1991年に長男が生まれました。いざ母になって痛感しましたね、子育てって本当に大変だと。泣きじゃくる長男を抱えながら「どうしてほしいか言葉で伝えてくれたら、ママもやってあげられるのに」って呟いていました(笑)。
内田 本当にそうよね。
佐藤 それと長男を妊娠中、これまた新聞で読んだんですけど、あるお母さんが働きに出るために、子供を自分の母親に預けたと。おばあちゃんは孫を預かったけど、自分の家事もあるから、仕方なくテレビの外国語講座を見せっ放しにした。そうしたら、1歳を過ぎた頃に変な言葉を喋り始めてしまったと……。その子は日本語習得にかなり苦労したそうです。
…それで、親の声で育てることも大事なんだと気づきました。そうして長男が6か月になった頃、たまたま見学した学習塾で「歌二百読み聞かせ一万賢い子」というポスターを見たんです。それで、じゃあ私は自分で童謡を1万曲、絵本を1万冊聞かせたらいいなって考えたわけです(笑)。環境が大事なので、例えばテレビは子供が上れない2階に隠しました。
内田 徹底していますね。佐藤さんはその教育を、自分でも楽しみながらやったところが成功の秘訣なのですね。本当に素晴らしいと思います。
佐藤 日本語を学ぶにも旬がある、とりあえず3歳までに両方1万回やってあげよう、これが始まりです。既に生後半年だったので残り時間は実質2年半。1日に15ずつやれば達成できる計算です。
…こう言うと驚かれるんですけど、絵本って1冊数分で読めますからそれほどきつくないんです。私は何冊読んだかをカレンダーに記録していきましたけど、貯金している感覚で、楽しいですよ。
…どうしても15冊達成できない日はあります。10冊しか読めなかったら、5冊分は借金です。その時は、次の日に無理して20冊読むんじゃなくって、16冊読む日を5回つくって解消しました。
内田 お子さんが読み聞かせを求めていない時もあるわけですよね。
佐藤 幸い嫌がることはなかったですが、そこで無理やり聞かせるのはよくありません。だから玩具で遊んでいる時は傍で読んであげました。これ、聞いていないようで、耳に入っているんです。それも1回にカウントします。実際、面白い時は遊びの手を止めて聞き入ってくれました。
…だんだん1万冊に近づいていくのを楽しみながら、主人にも数字を共有して時々手伝ってもらって、まず長男は、3歳までに1万冊の読み聞かせをやり切ったんです。
読み聞かせの記録をつぶさに記したカレンダー。 冊数の積み重ねを楽しむことがコツの一つだという
佐藤 長男が1歳半の時に次男が生まれて、その後三男と長女が生まれましたが、4人とも3歳までに1万冊に挑戦していきました。
…きょうだいが増えて面白かったのが、誰か一人の要望で読んであげていると、他の子たちも寄ってくるんです。大きくなってきた長男を膝の上に乗せていると、お猿さんみたいに三男が肩に乗ってきて、次男や長女が周りに寝転んで聞いている、みたいな(笑)。
内田 ママに読んでほしいって競争心がお互いに出てくるのよね。
佐藤 一冊の本を4人同時に読んだら計4冊でカウントできるので、ラッキー! と思っていました。
…4人に読み聞かせた本やその効能などは致知出版社の『読み聞かせのすごい力』にまとめましたけど、声で文字を読みながら目で追わせて、日本語の文字と音との対応を早くから教えることができたのはよかったと思います。
内田 そうね。日本語の基礎は、絵本や童謡を聞かせてさえあげれば十分だと私は思います。私も仕事の合間を縫って、自分の一人娘にやってみて実感しました。
佐藤 絵本の文章は綺麗でいいですよね。私の中では、それをメロディーに乗せたものが童謡です。子供たちも、日本語の響きを覚えやすいみたいです。
内田 読み聞かせではどんな絵本がいいかと悩む方もいるでしょう。子供にはそれぞれ持ち味があるから、本人が読みたがるものを与えればいいと思います。親の考えを押しつけるのではなくてね。
佐藤 教育的な内容にこだわる必要はないですよね。子供が楽しいものを与えるのが一番いい。
内田 子供は一度気に入ったものは満足するまで繰り返し読んでほしがる人なのですね。ところが、読んでほしいという気持ちを潰してしまう親御さんが多いのはとても残念。「昨日も読んだじゃない」は絶対にやめてほしい。
佐藤 私は「もう一回読んで」って言われた本は2回目でも1回分で数えました。「しめた!」と。
内田 読み聞かせは、人を大きく変える力があるんです。アメリカの精神科医ベッテルハイムが書いた『昔話の魔力』の中にADHD(注意欠如多動性障害)で入院していた子供が出てきます。障害が重くて、いくら治療しても落ち着かない。何でもこだわりが強くて、気に食わないことがあればウワーッと嬌声を発してしまう。
その彼が、ベッテルハイムの持っていた絵本に興味を示したのでそれを読んであげた。そうしたら何と、黙って聞いてくれたと。
佐藤 ああ、落ち着きのない子が。
内田 翌日以降も同じ本を読んでほしいと要求されて、読み聞かせは30日に及んだそうです。ただ驚いたことに、その子が別の本を読んでほしいと言った頃には、日常的に座って話を聴けるようになって、退院許可まで出たんです。
…子供が興味を持っている、その絵本に〝栄養〟があるうちは奪ってはいけない。何度でも読んで吸収させてあげるべきなんですよ。
佐藤 次男が生まれてすぐ、長男が幼児返りのようになって、同じ絵本を何回もせがまれたことがあります。「もう一回」って54回も(笑)。「え~、まだ読むの?」って思いながら付き合ってあげたら、途中でパタッと眠って、以降はせがまれなくなりました。
内田 弟にお母さんを取られたと嫉妬したけれど、お母さんを独占できたから、安心したのよ。読み聞かせは、親子の感情の交流ができる大切な機会でもあるんですね。
佐藤 いまおっしゃったように、子育てって子供と一対一で向き合ってあげることが大切ですね。子供は本当に非効率の塊で、無駄に思えることの連続ですけど、親が考え方や姿勢を変えるだけでガラッと変わる気がします。
…先生の目で見て、子供を伸ばす親御さんの姿勢、子育てのヒントになるものって何かありますか?
内田 以前、しつけのスタイルと語彙能力の関係を調べたことがあります。子供中心で自由遊びの時間を長く取る自由保育の環境で育った子と、反対の一斉保育の環境で育った子。語彙力をテストしたら、明らかに前者の得点が高かったんです。語彙得点が高い子供たちの共通点は「共有型しつけ」を受けていたことでした。
佐藤 どういうしつけですか?
内田 例えば、子供に考える余地を与える、子供の気持ちや動きに敏感になって柔軟に調整する、三つのH〈褒める・励ます・(視野を)広げる〉の言葉をかける。こういう「洗練コード」と呼ばれる言葉がけを用いるしつけね。
…もっと具体的に言えば、私が一番感動した、佐藤さんのご長男のお話があります。小さい頃から佐藤さんの読み聞かせを通して語彙力が高まっているから、ご長男は1歳半で文字を書き始められた。
佐藤 はい。何回も同じ絵本を読んで字を覚えてしまって、書きたくなったみたいです。変な癖がつかないよう、公文式に入れました。
内田 それで小学校に上がる頃には周りの子が書けない漢字をたくさん知っていた。それを絵日記の宿題で書いたら、先生に「まだ友達が習っていない字だから、使わないほうがいいね」と言われたんですってね。そこで佐藤さんがかけた言葉に心から感動したんです。
佐藤 恐縮です(笑)。あの時は確か「そうね、お友達が習っていない漢字はあまり使わないほうがいいね。漢字を読んだり書いたりできるくらいで偉いことなんてないんだよ。でも、漢字が分かると大人が読むような難しい文章や本を読めるようになるからいいかもね」って言った気がします。
内田 素晴らしい! 最後に「でも、漢字が読めると大人が読むような難しい本が読めるようになるからいいかも」と付け加えられた。漢字の機能について伝える絶妙な言い方に舌を巻きました。本当に賢い言い方だと思いました。
…先ほど三つの〝H〟で言うと、他の子供と比べるのではなく、その子の過去と比較して成長を褒める。先生に注意されたことを励ます。勉強する意義を伝えて視野を広く持たせてあげる。もっと楽しい経験を子供と共有したい、と願って行うのが共有型しつけです。だから子供が伸びていくんですね。
…この反対が「制限コード」の言葉がけを用いる「強制型しつけ」です。例を挙げると、子供がドアを閉める音がうるさかったら「静かに閉めて!」と叱ったり、家を出る前に「靴下をはきなさい。はかないと怒るよ?」と禁止や命令を多用したりしてしまう。自分で考えたり、選んだりする余地を与えないわけです。これをやると、考える必要がないから主体的に動けなくなり、子供が親の指示待ちになり、あるいは常に親の顔色を窺って家の中で緊張しながら過ごすようになってしまいます。
佐藤 理由を言うって大事ですよね。「静かに閉めて!」ってつい怒ってしまいますけど、それだとその場所のドアを静かに閉めるようになるだけで、音を立てたらいけない理由が分からないから他のドアで応用が利かないんです。
内田 私たちの研究では、結果として所得の多寡に関わりなく、共有型しつけを実践している家庭のほうがいわゆる難関校進学者や司法試験や医師国家試験などの最難関国家試験の合格者が多いことが判明しました。しつけの仕方が自走できる子供を育てるのに功を奏したわけです。
…いつも自分で考え判断する癖が身につき、将来の目標をめざして自発的に学習に取り組むようになったのです。結果として、子供の語彙の世界が広がり、学力テストの成績も向上したのでしょう。
佐藤 同じことを伝えるにも、親がどういう言葉を選ぶかで子供の人生が全然変わってしまう。それが経済的格差より大きな差を生む可能性があるんですね。
「共有型しつけ」では、洗練コードの言葉がけを用いる。普段の言葉がけが、子供の育ちを決めてしまうという
家庭でのしつけのスタイルと、語彙能力の高低には明らかな相関が見られる
内田 そういうことです。そういうしつけをしながら、先ほど申し上げた「外遊び」の時間をどんどん増やすといいですね。これからの時代、AIとどう向き合い、生きていくかは子供たちの避けられない課題ですけど、外で遊ぶことで3つの力が育ちます。1つは視力。2つ目は運動調整能力。最後の3つ目は、言葉の力なんです。
人間はいくら言葉を習っても、体験を伴わない言葉は頭に入っていきませんから。
佐藤 なるほど。確かに秋の紅葉という言葉は知っていても、銀杏の葉の黄色さ、楓の赤さなんて外で本物を見ないと分かりません。私も、子供たちと出かけて、学校の勉強は世の中と直結していると気づかせようとしていました。
内田 それがAIとの違いを生むんです。ChatGPTなどの生成AIに何か質問すると、的確な答えが返ってきて驚かされます。でもそれは膨大な情報を基に、言語体系に則って人間側の質問に続く可能性がある文字列を並べたものに過ぎない。AIの内部では、一つひとつの単語(記号)は私たち人間のように経験や感覚と結びついていないんですよ。小学3年生の佐藤さんが新聞を読んで得た閃きのような推論、思考の飛躍は、AIの苦手分野なわけです。
ですから言葉を学んで、本物に触れる。それが土台になってAI時代を生きる力が培われるんです。
佐藤 おかげさまで我が家では、末っ子の娘も去年(2023年)東大を卒業して社会人になり、子育てが完全に終了しました。先生のお話を受けて思うのは、親は自分の子供にこそ、相当慎重に考えて言葉をかけないといけないということです。
…ついつい自分の子供だと何を言ってもいいと思って、酷い言葉も言いがちじゃないですか。「こんな点数取って、よく平気で帰ってこられるよね」みたいな。そうしたら萎縮して、伸びる学力も伸びなくなるわけですよ。
…かといって常に「この言葉で大丈夫かな」って考えるのは大変です。だから私は「隣の子フィルター」を使っているんです。隣の家の子を想像して、果たしてその子にこんなこと言えるかなって。そこでいけないと思ったら、それは自分の子供にもかけちゃいけない言葉なんですよ。
内田 それはいい考えね。
佐藤 一度かけた言葉は何であれ、子供の心に刺さって絶対に取り消せません。自分のフィルターを持つことは必須だと思いますね。
…親にとって一番大事なことは、ゼロ歳から18歳、子育てが終わるまでの期間は自分にすべて責任がある、その覚悟を持って育てるということじゃないでしょうか。
内田 全く同感です。
佐藤 いまは女性も第一線で働く時代で、それ自体は大賛成です。ただ、仕事に就いたら子供に最優先で寄り添うわけにいきません。どうしても仕事より子供が下になってしまう。その意味で、仕事と子育ての両立、という文句に縛られると辛くなるでしょう。
…私は、時間で割り切るといいと思います。子供が巣立つまでは、家に帰ったらすぐ家事に走るのではなく、着替えるだけ着替えて、20分でもいいから横に座って宿題を見てあげてほしい。「手塩にかけて育てる」と言うように、丁寧に育ててほしいです。
…子供って勝手にどんどん成長するように見えて、親の助けなしに生きていけない存在です。特に小さい時期は、母親の帰りを待ち侘びています。それは、後から取り返せない貴重な時間なんです。
内田 私は働くお母さん方に、帰ってすぐ着替えなくてもいいって言っているの。私も娘が小さいうちは、帰った格好のまま、鞄を放り出して遊んであげていました。
…やっぱりね、子育ては時間の長さじゃないのよ。少なくても一緒にいられる時間を濃く、自分が職場や家の外で体験したことを子供と、家族との時間で共有していく。その心がけが大事なんです。
佐藤 本当にそうですね。あと若い頃ってつい理想的な母親を目指して、うまくいかずに疲れてしまうことがあります。でも、そんな自分を卑下して「私はダメな母親」なんて思う必要はないですよ。
内田 そう。完璧な母親なんて、あり得ないですから(笑)。
佐藤 18年間限定の子育てという仕事を「させていただいている」意識でできたら一番いいです。
内田 そう。自分は脇に置いて、子供が歩むペースに寄り添って、成長を待つ、見極めるという余裕を持ってほしい。決して急がず、急がせないで。子供より半歩下がって、子供が一歩先に進む手伝いをするのが親の役目です。子供に模範解答を見つけてあげる必要はありません。答えを見つけるのはいつも自分。人の数だけ違うはずよ。その自分だけの答えを見つけるための考える力、それこそ親が子供に贈り得る最大の「生き方のヒント」じゃないでしょうか。…(-_-;)(-_-;)(-_-;)
…と、まあ~、ここまで読んだアナタに食事をご馳走します…(~o~)
…孫たちにねだられて同行した「めんたいパーク」の「タラコたっぷりのスパゲッティ」…930円でなかなか旨かった(^^)/~~~コップ(水)がやたら多いのは、孫の深い先読みの準備…「ムッ、おぬし、できるな」…と、私の独り言(-_-)
…と言うことで、今日はここまで~。
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